はじめに:2026年、IFCが「実務の言葉」になりつつある
BIM推進担当として日々社内を駆け回っていると、ここ数ヶ月で「IFC」というキーワードが社内会議でも当たり前に出るようになったと実感します。かつては「BIMマネージャーだけが気にする中間ファイル形式」だったIFC(Industry Foundation Classes)が、いよいよ確認申請やメーカー提供データの標準として実務に組み込まれ始めました。今週公開された記事の中から、ゼネコンの現場感覚で押さえておきたい2本をピックアップして整理します。
今週のトピック
1. BIM図面審査がついに始動 ― 任意だが選択肢として無視できない
4月から本格稼働したBIM図面審査は、ゼネコンBIM担当として最も注視すべきトピックです。4月からついに始動した「BIM図面審査」 実務上のポイントと制度の意義を解説【緊急寄稿】によれば、現時点での重要ポイントは以下のとおりです。
- 利用はあくまで任意。従来の紙・電子申請と並列の選択肢
- 規模要件なし。小規模住宅から大規模建築物まで適用可能
- 全国で20弱の確認検査機関・特定行政庁が受付開始
「任意」とはいえ、審査機関側がIFCベースでの受付体制を整えつつあるという事実は重い。発注者から「次の案件はBIM審査で」と言われたとき、社内でフローを回せる状態にしておくかどうかは、競争力に直結します。
2. 設備メーカーがIFCで部品データを公開 ― 荏原製作所の動き
ポンプ・送風機をIFC形式で公開/荏原製作所は、設備系メーカーが自社製品のIFCネイティブ公開に踏み切った象徴的な動きです。これまではRevitファミリやDWGでの提供が中心でしたが、IFC形式での提供は次のメリットがあります。
- BIMソフトに依存せず、マルチプラットフォームで利用可能
- 属性情報(型番・能力・接続口径など)を含むため積算・施工管理に直結
- 設備設計事務所→施工→FMまでデータが一気通貫で流れる素地に
メーカー側がIFCで出してくれるなら、社内ライブラリ整備の手間が大幅に減るのは大きい。
ゼネコンBIM担当としての独自考察
既存業務への応用可能性
BIM図面審査については、当面は「意匠中心の確認申請モデル」に限定して試行するのが現実解だと考えています。社内の一貫BIMは構造・設備までを統合する方向で進めていますが、確認申請段階では情報過多になりがち。LOD200程度の意匠モデル+属性で審査をパスできる運用パターンを早期に確立したいところです。
社内標準化への活かし方
荏原のようなメーカー提供IFCの活用は、社内ファミリ/オブジェクトライブラリの標準化に直接効きます。これまでは「Revit版」「Archicad版」と二重管理していたものを、IFCをマスターとして一元管理する運用に切り替えられる可能性がある。協力会社との連携でも、特定ソフトを強制せずIFCで受け渡せれば、サブコンの参加障壁が下がります。
現実的な導入ハードル
正直なところ、課題は山積みです。
- IFC往復翻訳の品質劣化:プロパティセットの欠落・形状の簡略化はいまだ発生する
- 審査機関側のリテラシー差:20弱という受付機関数では、エリアによって使えるかどうかが分かれる
- 社内の積算システムとのマッピング:IFC属性と自社積算項目の対応表を作る泥臭い作業が必要
「IFCで出せます」だけでは現場は回らない。IFCを軸にしたワークフロー設計こそ、BIM推進担当の腕の見せどころだと感じています。
総括
今週のニュースを並べてみると、IFCは「規格の議論」フェーズから「制度とサプライチェーンに組み込まれるフェーズ」に明確に移行したと感じます。BIM図面審査の任意運用開始と、設備メーカーのIFC公開は、奇しくも同じ方向を向いています。ゼネコンとしては、これを単なるトレンドで終わらせず、申請・設計・積算・施工・FMをつなぐ社内標準として落とし込むタイミング。来週以降も、受付機関の拡大とメーカー追従の動きを継続ウォッチしていきます。