今週の社内会議で、来年受験する後輩から「建築士法が変わるって本当ですか」と聞かれた。ちょうど日経の記事が出た直後で、私自身もまだ条文まで追えていない。ついでに一級建築士まわりのニュースをまとめて眺めてみたら、法改正、耐震診断の現場、擁壁の話、そしてなぜかGACKT主演ドラマまで、妙にバラけた話題が並んでいた。順に拾っていきたい。
今週の一級建築士まわり、なにが動いたか
建築士法改正で受験要件が緩和、書面契約は全面義務化へ
いちばん実務に響くのは、やはり建築士法改正、受験の要件緩和 面積によらず契約の書面締結が義務にだと思う。受験の間口が広がるのは、建築系学科の学生数が細っている現状を考えれば妥当な調整だと感じる。もうひとつの柱、契約書面の締結義務が面積の閾値を外れて一律になる点は、小規模改修や部分委託まで含めて紙(またはPDF)が必ず動くということ。うちの支店でも、住宅系のリノベ案件で口約束に近い形で図面作業が先行するケースがまだあって、ここは是正が必要だと以前から思っていた。
静岡市の無料耐震診断、旧耐震住宅への需要が動いた
静岡市の「無料耐震診断」に問い合わせ増加では、1981年5月以前の旧耐震住宅を診断する一級建築士の姿が紹介されている。図面を持って現地に入り、目視と実測で判定していく。地味だが、こういう一戸一戸の作業の積み上げが街の耐震化を支えている。BIM側にいると忘れがちだが、既存ストックの多くはまだ紙図面ベースだ。
大谷石擁壁の危険性という、素材と法規のはざま
大谷石の擁壁はなぜ危険なのかは、素材の風化特性と当時の施工基準、崖条例が絡み合う話。設計側が「見た目」だけで判断できない典型例で、既存不適格の擁壁を抱えた敷地に新築を提案するとき、一級建築士がどこまで踏み込んで説明できるかが問われる。
ドラマの中の一級建築士
GACKT主演ドラマ『ブラックトリック』の主人公は弁護士でありながら一級建築士の事務所も構えているという設定。建築チームが証拠の「嘘」を作り上げるという筋書きで、職能のイメージとしてはかなり歪んでいる。ただ、一般層に一級建築士という資格名が届く経路として、こういうフィクションも案外バカにできない。受験要件緩和のニュースと同じ週に流れているのが、少し面白い偶然。
ゼネコンBIM担当として、何をどう受け止めるか
法改正の書面義務化は、BIM推進の立場からすると追い風だと思ってる。理由は単純で、契約書面が必ず発生するなら、そこに設計与条件・BIM実施要領・LOD・成果物リストを紐づけるフォーマットを標準化する余地が広がるから。今うちの社内テンプレは、大型案件向けにしか整備できておらず、中小規模の改修案件では担当者ごとに書式がバラバラになっている。ここを一気に統一する口実として使えるかもしれない。
耐震診断の話は、既存BIMの弱点をそのまま突かれている領域でもある。旧耐震の木造住宅を診断するのに、Revitモデルを起こす手間は割に合わない。ただ、点群スキャン+簡易的な構造モデルの組み合わせで、診断書の図面作成部分だけでも半自動化できないかは前から気になっていた。協力会社の構造事務所と話すと「診断は手描き+Excelで十分回る」と言われることが多く、そこを崩すには、BIM側が診断アウトプットのテンプレをこちらから持ち込むくらいの姿勢が要る。まだ試せていないが、社内の既存改修部隊と一度ワークショップを組みたい。
大谷石擁壁のような「素材×法規×時間経過」の判断は、BIMのアトリビュートに落とし込みにくい情報の代表例。属性欄に「大谷石・築40年・崖条例該当」と書けたところで、危険性を評価するのは結局人間の一級建築士。ここを無理にデータ化するより、判断根拠を残せるコメント運用のルールを整える方が現実的だと感じてる。
まとめ
受験要件が緩んで、契約はきちんと書面で残す。この二つが同時に来るのは、資格者の裾野を広げつつ、責任の所在は明確にするという方向で筋が通っている。BIM側の自分としては、書面義務化を社内テンプレ刷新の追い風にしたい。後輩には「受験、間口は広がったよ」と伝えるつもり。制度が動く年に受験するのも、悪くない巡り合わせだと思う。