先週、竣工前の商業施設で発注者向け内覧の準備をしていた時のこと。設計チームが作った点群ベースの内観プレゼンが、テクスチャの粗さで「思ってたのと違う」と言われて作り直しになった。もし3DGS(3D Gaussian Splatting)で撮っておけば、あの手戻りは減らせたんじゃないか。そう感じていた矢先、今週は3DGS関連のニュースが立て続けに出た。特にホロラボの新アドオンとロケハン3Dの編集ワークフロー事例は、現場担当としてかなり刺さる内容だった。
今週の3DGS、押さえておきたい3本
スキャナデータを上げるだけで高精細3DGSが自動生成される
ホロラボら3社が「TRANCITY Nebula」の新アドオンを共同開発したというニュース。スキャナデータをアップロードすれば位置補正不要で3DGSが自動生成される、しかも国内環境で処理が完結する、というのが売り。国内サーバーで閉じるという点は、発注者から情報管理を厳しく問われる案件では地味に効く。GPUクラウドの海外送信で稟議が止まった経験があるので、この一点だけでも社内で紹介する価値がある。
3DGSからBlenderで編集可能な建築モデルへ
3DGSと撮影画像から、編集できるホールの3Dモデルを作るでは、PortalCamで撮影した3DGSと写真を素材に、壁・天井・手すり・舞台を個別に修正できる形へBlender上で起こし直す流れが紹介されている。3DGSの見た目をそのままメッシュに変換するのではなく、部位ごとに再構成するというアプローチ。改修案件で既存躯体を測ってモデル化する工程を思い浮かべると、この「見た目のリアルさ」と「編集可能な形状」の両立は、まさに今欲しかった折衷案に近い。
歩きながら屋内外を連続スキャンできるハンドヘルド機
APPLE TREEが販売開始した3DMakerpro製のLiDARスキャナー「Raven」は、SLAM技術で歩行しながらスキャンでき、最大約50mの半径をカバーする(記事)。据置型のスキャナだと1フロア押さえるのに半日仕事だったのが、歩きながら取れるなら現場調査の負担はかなり違う。3DGSと組み合わせれば、素材データを短時間で確保できる。
関連して、Isaac Sim向けにUSD形式でメッシュ・3DGSを扱う手順をまとめたQiita記事も出ていた。iPhoneのScaniverseで実寸メッシュを作る話まで踏み込んでいて、シミュレーション連携を考える時の参考になる。
ゼネコンBIM担当としての独自考察
3DGSは去年までは「きれいなビジュアルが撮れる面白い技術」という位置づけで社内に紹介していた。今週のニュースを並べて見ると、明らかに「業務に組み込める道具」へ寄ってきている。特に自動生成の仕組みと編集可能なモデルへの変換フロー、この2つが揃うと使い所が具体化する。
うちの業務に当てはめると、まず現場記録の高度化が第一候補になりそう。週次で撮っている定点写真を3DGS化すれば、発注者への進捗説明や、後工程の協力会社との納まり確認で「現地に行かなくても分かる」場面が増える。積算部門との数量突合には形状精度が足りないので、あくまで意匠・施工管理側の共有ツールという棲み分けだと思ってる。
社内標準化に落とすなら、撮影機材と処理環境を絞ることが先。iPhone+Scaniverseで済ませる案件と、Raven級のスキャナで押さえる案件を分ける基準を作り、成果物をどのフォーマット(USD、メッシュ、Revitリンク)で残すかまで決めておかないと、担当ごとにバラバラなデータが散らかる未来しか見えない。
導入ハードルとしては、GPU環境の確保と、協力会社が開ける形式かどうかの2点が現実的な壁。ビューワーがWebで完結するならまだしも、専用ソフトが必要だと現場PCへの展開で必ず詰まる。この辺は、Web3D対応をうたうStockGraphyの「BEGIN Auria」のような制作サービスも含めて、内製と外注のバランスを見極めたい。
総括
3DGSはビジュアル技術から、BIMや施工管理の周辺データとして扱える段階に入ってきた。うちのチームでは来月、Ravenの実機デモを頼めないか営業に打診してみるつもり。実測値と3DGSの見た目、両方を1回の現調で持ち帰れるなら、既存の現況調査フローを組み替える価値がある。まだ試せていないが、感触は悪くない。