はじめに:3DGSは「実験フェーズ」から「業務インフラ」へ
BIM推進担当として日々現場と向き合っていると、点群やフォトグラメトリに代わる「現況再現の新たな選択肢」として3D Gaussian Splatting(以下3DGS)が急速に存在感を増しているのを感じます。今週は特に、データ圧縮・Web配信・ハードウェアという三つの側面で実用化に向けた動きが目立ちました。本記事では、ゼネコンBIM担当の視点で今週の3DGSトピックを整理し、社内活用の可能性を考察します。
トピック1:データ軽量化と配信基盤の進化
今週もっとも注目したのは、Niantic Spatialによる圧縮形式「SPZ 4」の発表です(重すぎる3Dデータを”10分の1″に圧縮。Niantic開発の空間コンピューティングを加速させる「SPZ 4」の実力とは)。並列ZSTDストリームの採用でエンコード速度が最大5倍になり、ブラウザ環境での読み込みも大幅改善とのこと。あわせてWorld Labsからは、Three.jsベースのストリーミングLoDシステム「Spark 2.0」がオープンソースで公開されました(World Labs、Web向け3DGSストリーミングLoDシステム「Spark 2.0」リリース)。さらにBabylon.js 6.33.0でも標準で3DGS表示が可能になり(Babylon.js 6.33.0で3D Gaussian Splattingが表示できるようになりました!)、Cesium ionでも3DGSデータの取り扱いが試されています(Cesium ionで3DGSデータを触ってみた!)。「重い・配信できない」という最大の壁が、確実に下がっています。
トピック2:取得手段の多様化とハンディスキャナー
取得側でも動きがあります。XGRIDSが歩きながら点群・3DGS・デジタルツインを同時取得できる「Lixel K2」を発売(XGRIDSが新型3Dスキャナー「Lixel K2」を発売)、福岡ではPortalCamの無料セミナーも開催予定です(最新ハンディスキャナー PortalCam 無料セミナー)。地上型レーザースキャナーの代替として「歩いて撮るだけ」のワークフローが現実味を帯びてきています。
トピック3:撮影・処理ノウハウはまだ発展途上
一方で、現場で使うとなるとまだ課題も多い。Qiitaでは360度動画からの3DGS生成がうまくいかない事例が共有されており(360度動画から3DGS生成がうまくいかない話とSplaticaの紹介)、COLMAPに代わる姿勢推定としてLingBot-Mapを試す検証も出ています(LingBot-Mapでスマホ動画から姿勢推定してみる)。また、Niantic Scaniverseに集積された膨大な空間データの行方を考察する記事も興味深い内容でした(ゲームを手放した後に残ったもの──Niantic Spatial「Scaniverse」と空間データの行方)。撮影・前処理の標準化はまだ手探り、というのがリアルな現状です。
ゼネコンBIM担当としての独自考察
当社のような中堅・準大手ゼネコンで3DGSをどう位置付けるか。私は「BIMの代替」ではなく「現況・施工中の状況をBIMに紐付けるための軽量レイヤー」として整理すべきだと考えています。具体的には、(1) 既存改修工事における現況把握、(2) 施工中の出来形・進捗の発注者報告、(3) 協力会社との合意形成用ビューワ、の3用途が現実的です。特にSPZ 4やSpark 2.0でブラウザ配信が軽くなれば、専用ビューワを協力会社にインストールしてもらう必要がなく、URLひとつで現況共有できる。これは現場の合意形成コストを大きく下げます。
社内標準化の観点では、撮影機材・撮影ルート・前処理ソフトのどこかを固定しないと品質がばらつきます。Qiita記事のように「ぼやける」事象は現場でも必ず起きるはずで、まずは特定機材(ハンディスキャナー)+特定処理パイプラインで小さく標準を作り、用途を限定してから広げるのが現実的でしょう。一方、導入ハードルとしては「BIMモデルとの座標統合」「成果物としての契約上の位置づけ」「ストレージコスト」が残ります。3DGSはあくまで参照データであり、積算・施工管理の正としてはBIMモデルが核、という線引きを社内で明確にしておく必要があります。
総括
今週の動きを総括すると、3DGSは「軽くなった・Webで動く・歩いて撮れる」という三拍子が揃いつつある段階です。ゼネコンBIMの世界では、いきなり主役になる技術ではないものの、現況把握と関係者間共有という地味だが重要な領域で、確実に効いてくる技術になりそうです。来週以降も、特に取得機材と圧縮形式の動向は継続ウォッチしていきます。