はじめに
今週もBIM関連のニュースを追いかけていたのですが、デベロッパーや組織設計事務所、住宅系団体それぞれが独自の方向でBIM活用を加速させている印象を受けました。特に「BIMモデルをどう”見せる/使う”か」という出口側の議論が増えてきており、モデリング工数の議論一辺倒だった数年前とは明らかに潮流が変わっています。今週は3DGS(3D Gaussian Splatting)、木材BIM、長谷工版BIM、そしてIFCビューアの4本を軸にまとめます。
今週の注目トピック
1. 日建設計が万博建築を3DGSで”解剖”
日建設計のDDLが東京建築祭2026で万博迎賓館・日本館を3DGS(3D Gaussian Splatting)で公開したというニュース(万博の迎賓館や日本館を最新技術「3DGS」で解剖 日建設計が「東京建築祭2026」で公開)。記事中の「BIMは結局2D画面で理解しにくい」という一文がかなり刺さりました。BIMモデルから施主・発注者への伝達手段として、レンダリングやVRに加えて3DGSという選択肢が現実味を帯びてきたということです。点群とも従来のメッシュとも違う、軽量かつフォトリアルな表現は、合意形成ツールとして相当に強力だと感じています。
2. 長谷工版BIMの発信拠点「HASEKO MIRAI BASEMENT」
長谷工が大阪・北浜に独自BIMと先端技術を発信する拠点をオープン(長谷工版BIMや先端技術を発信する「HASEKO MIRAI BASEMENT」)。マンション特化型ゼネコンが「長谷工版」と銘打って展開するあたり、汎用ツールではなく自社業務に最適化したBIMこそ競争力という潮流が見て取れます。発注者向けショールーム的機能を持たせる戦略も興味深いです。
3. 木材BIM活用普及事業の本格化
日本住宅・木材技術センターが木造分野のBIM普及事業を進めています(木材BIM活用普及事業)。中大規模木造案件が増えるなか、部材属性・調達・加工データまで含めた木造BIMの標準化は、RC造中心のゼネコンにとっても無視できないテーマです。
4. ブラウザで動くIFCビューア+干渉チェック
個人開発のIFCファイルをブラウザで開ける無料ビューア+干渉チェックツールも登場。インストール不要でIFCを確認できるツールは、協力会社とのやり取りで地味に効きそうです。あわせて建設DX・共創の未来図セミナーのように、BIM/CIMとバックオフィスのデータ連携を扱う動きも進んでいます。
ゼネコンBIM担当としての独自考察
今週のニュースを横断して感じるのは、「BIMモデルの完成度」よりも「BIMをどう翻訳して関係者に届けるか」が競争領域になってきたということです。当社のような中堅・準大手ゼネコンで考えると、論点は3つあります。
- 既存業務への応用可能性:3DGSは設計段階の合意形成だけでなく、施工中の出来高確認や近隣説明にも使えます。既存のRevit→Navisworksワークフローの”出口”として組み込めば、追加投資を最小に抑えつつ発注者対応の質を上げられます。
- 社内標準化への活かし方:長谷工版のような自社固有BIMの動きは、ライブラリ・テンプレート・命名規則の整備が肝です。汎用標準(ISO19650やIFC)に準拠しつつも、自社の積算コード体系や施工管理プロセスにマッピングしたファミリ整備を進める必要があると改めて感じました。ブラウザ型IFCビューアは、Revitライセンスを持たない協力会社との軽量な共有手段として標準フローに組み込む価値があります。
- 現実的な導入ハードル:3DGSも木材BIMも「やってみたい技術」ですが、現場が求めるのは属性データの一貫性です。3Dビジュアルが先行して属性整備が追いつかないと、結局2D図面に戻る悪循環になります。標準化チームとしては、見栄えのする新技術に飛びつく前に、IFC属性マッピングの定着を優先したいところです。
総括
今週はBIMの”表現層”と”標準化層”の両面で動きがありました。3DGSのような新表現は発注者対応で武器になり、木材BIMやIFC関連ツールは協力会社連携の地盤を固めます。派手な技術と地味な標準化の両輪をどう回すか——若手BIM担当として、この視点を持って来週も情報を追いかけたいと思います。