先週、社内のBIMマネージャー会議で「維持管理フェーズまで見据えたBIMって、具体的に何から手を付けるべき?」という話題が出ました。竣工モデルを渡して終わり、では発注者に価値が伝わらない。かといってTandemのような運用フェーズ向けツールを、いきなり数十億規模のプロジェクトで試すのも怖い。そんなモヤモヤを抱えていた矢先、今週たまたま目に入ったのが「自宅の温湿度計でTandemを試す」という記事でした。これが意外と示唆に富んでいたので、今週のTandem関連トピックと合わせて整理してみます。
今週のTandemまわりで気になった動き
SwitchBotを使った「自宅デジタルツイン」の実装例
SwitchBot温湿度計とTandemでお手軽にデジタルツイン入門と、その関連であるSwitchBot APIでデバイス情報を取得|Autodesk TandemとSwitchBotで自宅のデジタルツインを作るは、市販のIoTセンサーからAPI経由で温湿度データを取得し、Tandem上のモデル要素に紐付ける、という手順を実装レベルで書いてくれてます。
面白いのは、Tandem側の「センサー要素にリアルタイム値を流し込む」部分のハードルが、思っていたより低いこと。ゼネコンで一足飛びに大規模建物のBEMSと繋ぐと契約や責任分界の話でつまづきますが、自宅レベルなら数千円で試せる。若手の勉強素材としてかなり優秀だと感じました。
Autodesk自身の発信とAECOでの位置づけ
デジタル ツインとは? インテリジェントなデータ モデルは建造環境をどう形成するかではAutodesk自身が「静的なBIMモデル」と「稼働中のデータと繋がったモデル」を区別して説明してます。実務者としては、この線引きを社内で共通言語にしておくのは地味に重要。竣工モデル=デジタルツイン、と勘違いしている発注者や上司にどう説明するかで、初期の要件定義の質が変わってくるからです。
MediumのUnderstanding Autodesk Tandem: A Practical Perspective on the Future of AECOもタイトル通り実務目線の整理で、中身は薄めですが「AECOの中でTandemがどこに座るのか」を海外の人がどう捉えているかを知る参考になります。
市場と大型事例
【Autodesk株価】連日の株価上昇、デジタルツインとAI戦略が買い支えにという株価ニュースも出ていて、投資家もこの領域を評価している模様。事例としてはトルコのメトロ・イスタンブールが全駅のデジタルツインを構築という話や、国内では清水建設がワークテック企業epturaとパートナー契約を結んでます。ファシリティ管理側のプレイヤーとの提携が進んでいるあたり、竣工後のデータをどう回収して価値化するかがゼネコン間の競争軸になりつつあると読んでます。
ちなみに直接Tandemとは関係ないですが、清水建設が材料噴射型3DプリンティングでRC柱を実工事施工という記事も同じフィードで流れてきました。3Dプリント部材はセンサー埋め込みとも相性が良いので、将来的にTandemに載せる対象になり得ると個人的には見てます。
ゼネコンBIM担当としての独自考察
正直、今のうちの体制でTandemを本格導入するのは早いと感じてます。理由は3つ。
- 竣工モデルの粒度と属性がFM運用に足りていない。設計・施工で作ったモデルは干渉チェックや数量拾いに最適化されていて、機器のシリアル番号や保全周期といった運用属性はまだ手入力に近い。
- 協力会社側のモデル納品ルールが揃っておらず、Tandemに載せる前段のCOBie相当のデータ整備で確実に工数が跳ねる。以前、電気サブコンから受け取ったモデルの器具ファミリを、うちの命名規則に合わせるだけで2週間溶かした経験があります。
- 発注者側の受け皿がない。デジタルツインを引き渡しても、運用するテナントやビルメンが読めない・触れない、では宝の持ち腐れ。
ただ、これは「導入しない理由」ではなくて「準備の順番」の話だと思ってます。むしろSwitchBotの記事のように、まずは若手数人で自宅や社内の会議室にセンサーを置いてTandemに流し込む、というPoCから入るのが現実解。うちのBIM推進チームでも、来月あたり会議室のCO2濃度と稼働率をTandemに載せる小さな実験を提案してみるつもりです。数万円と土日1回で済むので、稟議も通しやすい。
社内標準化の観点だと、Tandemで必要になる属性項目を逆算して、設計段階のRevitテンプレートに「運用属性」のパラメータグループを追加しておく、という仕込みが効くと踏んでます。竣工後に慌てて属性を足す悲劇を、今度こそ避けたい。
まとめ
Tandem本体の派手なアップデートは今週なかったですが、周辺の事例と入門記事が同時に出てきたことで、逆に「小さく始めて標準を作る」タイミングとしては悪くないと思ってます。