先週、社内の積算部から「RC躯体の数量、モデルから直接拾えないの?」と聞かれた。図面ベースで拾い直している現状に、若手ほど疑問を持っている。ちょうど今週、積算BIM関連のニュースが立て続けに出てきたので、実務目線で整理してみる。
今週のトピック整理
openBIM Awards 2025で日本チームが部門最優秀賞
国交省を中心とした産学官チームが、積算におけるBIM/CIM活用の取り組みで部門最優秀賞を受賞した。日本勢としては初の快挙らしい。
- 我が国産学官チームがopenBIM Awards 2025で日本初の部門最優秀賞を受賞!(mlit.go.jp)
- 国交省ら産学官チームがopenBIM Awards 2025で日本初の部門最優秀賞受賞(digital-construction.jp)
- BIM国際賞を初受賞 3次元モデル用いた積算(digital.kentsu.co.jp)
ポイントはopenBIM、つまりIFCベースで積算まで通した点だと思う。ベンダーロックを避けつつ数量根拠を残せるなら、公共案件を持つゼネコンには追い風になる。
2D図面×AI、BIM移行の過渡期をどう埋めるか
7月のウェビナー告知だが、「2D図面×AIで積算を効率化し、その先のBIM移行につなぐ」というテーマ設定が気になった。
設計事務所からもらう図面がPDFのまま、という現場はまだ多い。いきなり全案件BIM化は無理なので、AI-OCR的な2D積算を挟んで移行するのは現実解だと感じる。
Revit APIで配管・ダクトの数量を自動集計
個人開発のRevitアドイン「PipeDuctQuantifier」が公開された。配管とダクトの長さを集計してCSV出力する、非常にシンプルなツール。
- 【Revit API】配管・ダクトの長さを簡単に算出するツール(PipeDuctQuantifier)【Revit2026対応】
- 【AI予想】BIMの100年(同著者による、5年後にAI積算・工程表生成が標準化するという予想記事)
大掛かりな積算システムを入れる前に、こういうAPIレベルの小道具で「モデルから数量が出る」体験を現場に配ってしまう方が、標準化の空気は作りやすい。
ゼネコンBIM担当としての独自考察
賞を取った産学官の取り組みは正直まぶしい。ただ、うちのような中堅ゼネコンにそのまま持ち込めるかというと、話は別だ。
まず既存業務への応用。積算部が使っているのは長年の歩掛りが染み込んだ専用ソフトで、モデルからIFCで数量を渡しても「この数字の根拠は?」で止まる。openBIMの受賞事例が意味を持つのは、IFCのプロパティに「どの部材か」「どう拾ったか」の根拠が乗るからで、ここを社内テンプレのShared Parameterに落とし込めば、積算部との会話が変わる気がしてる。逆に言うと、モデリングルール(部材分割、階の切り方、下地とふかしの扱い)を先に決めないと、数量は永遠に合わない。先週も、協力会社から届いたモデルで天井裏の梁が階またぎになっていて、階別数量が丸ごとズレた。
標準化への活かし方としては、Revit APIの小さなツールを「標準テンプレ+標準アドイン」のセットで配布する形が現実的だと思ってる。PipeDuctQuantifierのようなものを内製でいくつか揃え、まずは設備の長さ、次にRC躯体の体積、と段階を踏む。全部入りの積算BIM基盤をトップダウンで導入するより、現場の負担は軽い。
導入ハードルは三つ。設計側モデルの精度、協力会社の対応力、積算部の評価基準。特に三つ目が厄介で、モデル拾いと従来拾いの差異を「誤差」ではなく「定義の違い」として認めてもらうまでに時間がかかる。2D×AIの過渡期ソリューションを間に挟むのは、この温度差を埋める意味でも悪くない選択に見える。
まとめ
今週は「国際的に評価される積算BIM」と「現場で今すぐ動く小さな道具」が同じタイミングで流れてきた週だった。上と下、両方から詰めていくしかない。来週の社内勉強会で、PipeDuctQuantifierを触ってみて、設備担当の反応を見るところから始めるつもり。数量が合う日は、たぶん一気には来ない。