先週末、協力会社の職長さんに「BIMのモデル、現場でどう見りゃいいの」と真顔で聞かれました。タブレットは配ったし、ビューワの操作説明もしたはずなのに、まだ距離がある。今週の記事を読んでいて、まさにその距離をどう埋めるかという話が業界全体で動いていると感じたので、施工BIMに絞って整理してみます。
今週の注目トピック
「リアローディング」からの脱却という問題提起
ITmediaの現場BIM連載で、BIMが一過性のブームで終わらないために Vol.3 「リアローディング」からの脱却【現場BIM第11回】が公開されました。設計データを施工でもう一度作り直す、あの二重投資からどう抜けるかという話です。うちでも設計モデルを受け取ってから、部材IDを付け直したり、施工手順に合わせて分割し直したりで、結局作り直しに近いことをやっている。設計と施工でモデルの目的が違う以上、丸ごとの再利用は幻想だと個人的には思っていて、どこを引き継いでどこを作り直すか、その線引きを社内で明文化する段階に来ていると感じます。
電気設備7社の標準化協議会
建設通信新聞の業界BIM標準化へ協議会/「使える」ルール整備/電気設備工事7社によれば、電気設備工事の主要7社が集まって業界共通のBIMルール整備に動き出したとのこと。ゼネコン側からすると、これはかなりありがたい話です。今は協力会社ごとにモデリング粒度もパラメータの持ち方もバラバラで、統合モデルを組むたびに毎回すり合わせをやっている。サブコン側で「使えるルール」が揃えば、こちらの標準テンプレも設計しやすくなる。
高砂熱学のBIMマネジメント講習
高砂熱学の全てのライン管理職が参加 本気の「BIMマネジメント講習」は、オペレーターではなくライン管理職全員を対象にした点が肝だと思います。BIMを回すのはモデラーだけの仕事ではなくて、承認する側、指示を出す側が読めないと結局止まる。うちの社内でも所長クラスがモデルの見方を分からないまま「BIMやっとけ」で終わる場面があって、そこに手を入れないと現場は変わらない。
点群と数値計算——足回りの技術
Qiitaでは点群データとは?建設・測量で使う仕組み・座標系・精度を解説という基礎解説記事、それに土木のためのPython入門⑥ SciPyで科学技術計算と土木のためのPython入門③ pandas入門編が出ています。派手さはないですが、施工BIMで出来形管理や既存躯体のモデル化をやろうとすると、点群の座標系や精度の話、そして取得データをpandasで捌く力は避けて通れない。若手が独学で追いつける教材が増えているのは素直に助かります。
ゼネコンBIM担当としての独自考察
今週の記事群を並べて眺めると、施工BIMの論点が「モデルをどう作るか」から「誰がどう回すか」に完全に移っているのを感じます。リアローディング問題も、電気設備の協議会も、高砂熱学の管理職講習も、突き詰めれば運用と役割分担の話です。
うちの社内標準化に引き寄せて考えると、まず着手すべきは施工モデルの「入力仕様書」だと思っています。設計から受け取るモデルに何が入っていれば施工で使えるのか、逆に何が入っていると邪魔なのかを、工種別に整理する。これは設計部門と喧嘩しながら決めるしかない。電気設備側で標準化が進めば、こちらも建築・構造・設備の統合基準を出しやすくなるので、業界動向と社内整備のタイミングを合わせたいところです。
導入ハードルとしては、正直なところ現場所長の理解が最大の壁です。モデラーを増やす予算は付いても、所長の時間を講習に割く判断は簡単に下りない。高砂熱学のように全ライン管理職を巻き込む決断ができるかは、経営の本気度そのものだと感じます。うちの規模で同じことをやるなら、まず支店単位の試行から始めるのが現実的かもしれない。
点群とPythonについては、標準ワークフローに組み込むより先に、各現場の担当者が「使える道具箱」として持てる状態を作りたい。出来形照査で点群を回した現場と、電卓と巻尺で終わらせた現場の差が可視化されれば、標準化の議論が一気に前に進むはずです。
総括
施工BIMは、ツール選定の議論を卒業して、組織運営の課題に入ってきたというのが今週の実感です。モデルを作れる人を増やすフェーズは終わりつつあって、次はモデルで判断できる管理職をどう育てるか。冒頭の職長さんの質問に、来月までにちゃんと答えられる資料を作ろうと思ってます。