先週、協力会社から「BIMモデルは受け取ったけど、鉄骨屋さんは結局DWGでくれって言ってる」と電話をもらった。うちがどれだけRevitで一貫BIMを推進しても、川下の実務ではAutoCADのDWGが最終成果物になる場面がまだ多い。今週のAutoCAD関連ニュースを追っていて、この「DWGはしぶとく残る」という現実を改めて突きつけられた。ブラウザで動くDWG差分ツール、Excel連携の図枠管理、JavaScriptによる自動化。方向性はバラバラに見えて、根っこは同じだと感じてます。
今週のトピック
DWGがブラウザで動く時代
Diff DWG/DXF Drawings in the Browser — Introducing @mlightcad/cad-diff-viewer と Turn Any DWG into a Portable CAD Design Review App — in One HTML File はどちらも @mlightcad から。ポイントは「クライアント側だけで完結する」ところで、変換サーバーもアップロードも不要。前者は2つの図面を並べて差分を可視化、後者はDWGを単一のHTMLファイルに埋め込んで配布できる、というもの。
発注者にPDFで渡すと「線が消えた」「レイヤ分けが見えない」と言われることが正直まだある。ブラウザで開けるDWGビューアが安定してくれば、社外レビューの敷居は下がる。ただし秘匿性の高い案件でHTMLに図面を埋め込んで渡すのは、社内の情報管理ルール上まだハードルが高そう。
AutoCADをJavaScriptで動かす
JavaScript for AutoCAD は、AutoCAD 2027のヘルプに開発者向けドキュメントとしてJavaScriptが並んでいることを紹介した記事。AutoLISPや.NETに加えて、Visual Studioを立ち上げずにコードを書けば動く、と。筆者は「できることはコマンド〜」と書きかけて途切れているので実力の範囲はまだ限定的そうだが、社内でカスタマイズを書ける人材の裾野が広がる意味は大きい。
うちの部署でも、AutoLISPを触れるのはベテラン数名だけ。若手はJavaScriptなら書ける。この差は思ったより効く。
Excelで図枠を一元管理
AutoCAD のモデル空間の図枠を Excel で一元管理するツール は、モデル空間に図枠を並べる運用を前提に、図面リストをExcel側に持たせて図番・工事名称・レイアウト・PDF出力までボタン一発で回すツール。工事名称の変更が全図枠に一括反映される、というのは地味だが刺さる話。
設計変更で工事名の枝番が変わるたびに図枠を手で直していた頃を思い出した。14日間の体験版が配布されている。
ゼネコンBIM担当としての考察
今週の記事を並べて感じたのは、AutoCAD周辺の進化が「BIMに置き換わる前提」ではなく「DWGが残る前提」で進んでいること。これはBIM推進側からすると悔しさ半分、安心半分。うちの現場だと、意匠・構造はRevitで進めても、設備の一部・仮設・鉄骨詳細・協力会社成果物はDWGに落ちる。ここを無理にRevitへ寄せると協力会社の負担が増えて、結局は手戻りになる。
この前提で今回のツール群を社内標準にどう組み込むかを考えると、使いどころは3つある。ブラウザ差分ビューアは、協力会社から届く改訂版DWGのチェックに使えそう。手元のAutoCADライセンスを持たない施工管理担当でも、差分だけ見られれば十分な場面は多い。Excel図枠管理は、施工図の図面リスト運用と相性が良い。うちは図面管理を独自のExcel台帳でやっているので、既存の台帳を活かせるなら現場が拒否反応を示しにくい。JavaScript拡張は、社内標準テンプレの配布や図面チェックbotに使えるかもしれない、と踏んでます。
導入のハードルは正直ある。まず情報システム部門の審査。ブラウザ完結型でもHTMLに図面を埋める仕組みは説明が要る。次にライセンス方針。無償・体験版ツールを本番運用に載せる際の責任分界。あと、AutoCAD 2027自体にも AutoCAD Electrical 2027 終了時のエラー のような未解決の不具合報告があり、最新版への一斉更新は慎重にやりたい。
総括
BIM一貫化を掲げていても、現場の呼吸はDWGで動いている。今週のニュースは、その現実に対して「AutoCADの周辺を軽くする」方向の答えを出してくれた。まずはブラウザ差分ビューアを自分のPCで試して、来週の協力会社ミーティングで一度使ってみる。うちの標準に載るかどうかは、そこからの話。