先週、社内の会議室で先輩から「点群スキャンのデータ、重すぎて発注者に渡せないんだよ」と相談された。80GB近いLASファイルを前に途方に暮れていたわけだが、ちょうど同じ週に3DGS関連の記事がまとまって出てきて、頭の中で少しずつ線がつながってきた。Three.jsの標準機能に3DGSが入り、XGRIDSがスマート製鉄所のデジタルツインを構築し、360°カメラでのワークフロー記事が続けて公開された。今週の動きを、ゼネコンのBIM担当という立場から整理してみます。
今週の3DGS、押さえておきたい3つの動き
Three.js r186で3DGSが標準表示可能に
Three.jsでの3Dガウシアンスプラッティング入門 – ICS MEDIAによると、2026年9月8日リリースのThree.js r186で、3DGSがライブラリの機能として表示できるようになった。スマホで数十秒撮影するだけで、ブラウザ上でぐるぐる見回せる3Dデータが作れる。これまで3DGSの表示は専用ビューアや個別実装が必要で、発注者や協力会社に「見てください」と渡すハードルが高かった。Webブラウザで完結するなら、共有のしかたが根本的に変わる。
360°カメラ + COLMAPで撮影から学習まで
Colmapと360カメラで始める簡単&高速 3D Gaussian Splattingと、その英語版Easy&Fast 3D Gaussian Splatting workflow with COLMAP and 360 Cameraでは、全天球画像を使ってSfM(カメラアラインメント)を高速化し、3DGSの学習につなげるワークフローが解説されている。以前Metashape版として公開されていた手順を、無料のCOLMAPに置き換えたもの。有償ソフトを社内展開する稟議は正直しんどいので、OSSベースで完結する手順が出てきたのは実務者としてはありがたい。
製鉄所のデジタルツイン事例と国内セミナー
XGRIDS × Hightopo | 3DGS Gaussian Splatting for a Smart Steel Plant Digital Twinでは、XGRIDSのスキャナで取得したデータを3DGS化し、大規模プラントのデジタルツインを構築した事例が紹介されている。国内でもPortalCamとXGRIDS Lixel K2のセミナーが福岡で10月2日・11月5日・12月10日に予定され、TRANCITY NebulaがXGRIDSデータのダイレクトアップロードに対応する動きも出ている。周辺エコシステムが月単位で整ってきた印象。
基礎知識と活用事例はMogura VRのまとめ記事や建物の保存のための3D Gaussian Splatting Surveyにコンパクトにまとまっているので、初見の方はまずこちらから。
ゼネコンBIM担当として考えたこと
正直に言うと、3DGSはまだ社内標準に組み込む段階には遠い。ただ、使いどころは見えてきた。
まず既存業務への応用。うちで一番効きそうなのは「発注者への現況報告」と「協力会社との合意形成」の2場面。点群だと重くて開けない、モデルだと現況の質感が伝わらない、写真だと空間把握ができない。この隙間に3DGSがハマる。特にThree.jsで表示できるなら、社内Webポータルに埋め込んで発注者に共有URLを渡せる。CADが入っていないPCでも見られるという条件は、意外と大きい。
社内標準化への活かし方は、正直まだ迷ってます。BIMモデルの正である座標系・LODと、3DGSの「見た目重視・寸法保証なし」というキャラクターは相性が悪い。個人的な予測ですが、当面は「BIMの副資料」として位置づけるのが現実的だと思ってます。竣工時のas-built記録、改修前の現況記録、仮設計画のリファレンス、といった用途で運用ルールを作る。逆に、数量算出や施工図の根拠にはしない、と線を引く。この線引きを曖昧にすると、現場で「3DGSで測ったから」というトラブルが起きそうで怖い。
導入ハードルとして残るのは3点。撮影者のスキル依存(360°カメラの撮り方で品質がぶれる)、GPU学習環境のコスト、そしてファイル形式の非標準性。特に3つ目は、5年後に開けるのかという問題を含んでいて、長期保管が前提のゼネコンとしては無視できない。IFCのような公開仕様が3DGS側にも欲しいところ。
まとめ
Three.js標準化と国内エコシステムの整備で、3DGSは「面白い研究」から「業務で試せる道具」に一歩進んだ週だった。うちの部署では、まず来月の改修案件で現況記録として撮ってみて、発注者への説明資料に混ぜてみようと思ってます。点群を置き換えるものではなく、点群とBIMの間を埋めるもの。今の距離感はそれくらいがちょうどいい。