先週、協力会社の設備担当と半日かけて梁とダクトの取り合いを詰めていた。Navisworksでクラッシュは事前に潰していたつもりが、施工手順を考慮した「本当の当たり」は現場感覚のある人と画面を見ないと出てこない。今週のBIM関連の記事を眺めていて、この「モデルと現場の距離」をどう縮めるかという話題がいくつも並んでいた。順に整理してみます。
座標変換とクラッシュ検出:足元の実務がまだ課題
RevitのローカルXYZを実測GPSに落とす話
Building Geodetic Math Engines: How I Transformed Revit Blueprints Into Real-World GPS Coordinatesでは、現場の測量員が印刷したRevit図面とGPSを持って立ち、手作業の座標変換に4時間かけている場面から書き始められている。測地系の数式を組み込んで自動化した、という話。うちでも杭芯の座標をCADから拾って計算書に転記する作業が地味に残っていて、Revit共有座標のズレでやり直しが発生することがある。地味だが効く領域。
クラッシュ検出の再整理
クラッシュ検出関連の記事が今週は3本並んでいた(How Clash Detection Improves Project Efficiency、Why BIM Coordination Services Are Essential、What Is BIM Coordination?)。内容は正直、目新しさよりも「なぜ今また基礎の話が需要あるのか」という点が気になった。海外のオフショアBIMコーディネーション需要が伸びていて、発注元教育も兼ねているのだと思う。
AIで編める3Dモデルという新しい入口
Cartesian by Formasは、建築とプロダクトデザイン向けのAI 3Dモデリングツール。「部屋はそのまま、椅子だけを変える」といった部分編集ができる点を売りにしている。Revitのファミリを組む前段階、企画・基本設計での案出しには相性が良さそう。ただし、IFC出力やパラメトリック情報の持ち方が実務に耐えるかは未検証。うちの意匠チームが試したら面白い感想が出そうだと思ってます。
人材の話:インドのBIM/CIMエンジニア受け入れ
インドのBIM/CIMエンジニアを日本へ ヒューマンリソシアがアディティヤ大学と連携。日本のBIMオペレーター不足は明らかで、モデリング作業を海外リソースに出す動きは大手から始まっている。うちの規模でも、標準テンプレートと入力ルールがきちんと文書化できていれば、外部委託の選択肢は広がる。逆に言えば標準化が甘い会社は委託しようにも出せない、という当たり前の現実に突き当たる。
同じ週に大成建設のJPIセミナー「BIM・データ活用をDXからAXへ」の告知も出ていた。DXの次はAX(AIトランスフォーメーション)という言い回しは正直やや先走った印象もあるが、大手が何を語るかは追っておきたい。
ゼネコンBIM担当としての独自考察
今週の話題を並べてみて、共通するのは「BIMの外側との接続」だと感じてます。GPS座標との接続、AIとの接続、海外人材との接続。社内で一貫BIMを回すという目標も、結局は入口と出口をどう他システム・他組織とつなぐかに尽きる。
座標変換の話は、地味だがうちの土木部門と共有したい内容。測量座標とRevit共有座標のズレは、施工段階で毎回誰かが手で吸収している。Dynamoで簡易ツールを組めば、月に数時間は浮くはず。標準テンプレに組み込む価値はあると思ってます。
AI 3Dモデリングは、正直まだ標準ワークフローには入れづらい。IFCで受け渡した後の属性欠落や、確認申請図との整合をどう取るかが読めない。ただ、意匠の初期スタディで案を10個出す、といった使い方なら明日にでも試せる。うちの若手が触りたがるはず。
インド人材の件は、社内で標準化を推進する立場としては追い風。ファミリ命名規則、共有パラメータの定義、視覚化ルールをドキュメント化する仕事は地味で予算も付きにくいが、外部委託を視野に入れた瞬間に投資対効果が説明しやすくなる。「標準化するとインドに出せますよ」は経営層への殺し文句になるかもしれない。
総括
派手なAIの話題より、座標変換や命名規則といった足回りの記事の方が刺さった週だった。来週はDynamoでの座標変換ツールを試作して、土木部門の担当者に見せに行こうと思う。標準化は結局、誰かが手を動かして雛形を作らないと始まらない。