月曜の朝、Yahoo!ニュースで八重洲の鉄骨落下事故の続報を見て、コーヒーが冷めるまで画面を眺めていました。2023年に作業員5人が死傷した事故で、施工を担当したゼネコンの社員2人が業務上過失致死傷の疑いで書類送検、原因は鉄骨の重量計算ミスとされています。今週の施工管理技士まわりのニュースは、この事故報道と、40代転職・キャリアチェンジ系の記事が並びました。BIM推進の立場から見ると、どれも他人事ではありませんでした。
今週の主なトピック
八重洲事故の書類送検、計算ミスという原因
八重洲2人死亡事故 計算ミスで鉄骨落下か、大林組社員2人書類送検(朝日新聞) – Yahoo!ニュースによれば、鉄骨の吊り上げ作業に関わる計算に誤りがあった疑いがあるとのこと。詳細な計算内容までは報道されていませんが、施工計画段階の検討ミスが現場の死亡事故に直結したという構図は、施工管理技士の責任範囲の重さをそのまま突きつけてきます。
個人の推測になりますが、揚重計画や仮設計算は今もExcelと手計算、社内の熟練者のレビュー頼みの現場が多い印象です。うちの支店でも、鉄骨建方の検討書は担当者が徹夜で仕上げて、翌朝上長が朱書きで戻す、という光景を何度も見ました。ここに第三者チェックの層が入っているかどうかは、会社や現場によって本当にバラバラだと感じてます。
40代転職と、資格の値段
施工管理の40代転職は可能か 経験者・未経験別の採用実態と年収の現実では、1級施工管理技士を持つ40代は監理技術者として引く手あまた、という採用実態が書かれています。建設業法で配置が義務付けられているので、資格保有者の頭数が受注可能な工事量を決めるという構造は変わらない、と。
関連して、現場監督から建設コンサルタントへの転職や現場監督からコンストラクションマネジメントへの転職も同時期に出ています。現場を離れてCMや設計コンサル側に回るキャリアパスが、以前より現実的な選択肢として語られるようになってきた。ゼネコンの中にいると、優秀な先輩ほど発注者側やCM会社に引き抜かれていくのを実感します。
ゼネコンBIM担当としての独自考察
計算ミスは、BIMで本当に防げるのか
八重洲の件を受けて、社内Teamsでは「これこそBIMで揚重シミュレーションしていれば」という声が早速上がっていました。正直、半分同意で半分違うと思ってます。Tekla StructuresやRevitに鉄骨を入れて重量を自動集計する仕組みは既にあって、うちも一部の物件で使ってます。ただ、吊り点の設定、玉掛けワイヤーの角度、クレーンの定格荷重との突合まで一気通貫でモデル上で検証できているかというと、そこまでいってない。
結局、モデルから拾える数量と、施工計画側の検討書がつながっていないと同じミスは起きます。BIMを「見える化ツール」で止めず、揚重計画テンプレートに鉄骨IDと重量を自動連携させる仕組みを作れないか。うちの標準テンプレの次期改訂で提案してみるつもりです。
資格者不足とBIMの関係
40代転職記事を読んで思ったのは、1級施工管理技士の頭数が受注量を縛るなら、資格者一人あたりが見られる現場数を増やす方向にBIMを使えないか、ということ。遠隔臨場、モデルベースの週次進捗共有、協力会社との干渉チェック自動化。ここが回れば、監理技術者が複数現場を横断的に見る負荷は下げられるはずです。
ただ現場ハードルは高くて、協力会社側のBIM対応レベルが揃わない。鉄骨ファブはTeklaで来るけど、設備サブコンは2D図面のまま、みたいな案件はまだ普通にあります。ここの底上げなしにBIM前提の省力化を語っても、絵に描いた餅で終わる。
キャリア流出と社内標準化
CMや建設コンサルへの転職ルートが確立してくると、社内でBIMを覚えたエース級が発注者側に移っていく流れは強まりそうです。個人としては本人のキャリアを応援したい。でも会社としては、属人化したBIMノウハウが人と一緒に消える。標準テンプレとマニュアルへの落とし込みを、今のうちに終わらせておかないと、5年後に困るのはうちだと感じてます。
総括
事故報道と転職記事が同じ週に並んだのは偶然ですが、施工管理技士という職能が抱える負荷と、その担い手が細っていく現実が同じ根っこに見えました。BIMは万能薬ではないし、揚重計算のミスを完全に消せるとも思ってません。ただ、検討書とモデルをつなぐ地味な標準化を積み上げれば、少なくとも「一人の担当者が徹夜で気づかなかった」を「二重チェックが自動で走る」に変えられる余地はある。まずは次の鉄骨物件で、重量集計の自動連携を一つ試してみます。