今週「一級建築士」で拾ったニュースは、正直バラつきがすごかった。78歳が自宅に6mのツリーハウスを建てた話、福岡の28歳が築古戸建てを5戸買い進めている話、富山でカラフルな服装で活動する建築士の紹介。DXやBIMの話題は皆無です。でも、逆にこの「散らばり方」こそ、うちみたいなゼネコンBIM担当が普段見落としがちな景色だと感じたので、今週はそこから書きます。
今週のニュースを整理する
築古戸建てを買い進める一級建築士の「買わない条件」
福岡在住のみつさんは、建築関連の会社で働きながら3年間で戸建て5戸と民泊1戸を取得、月14万円の手残りを作っている。築古は「致命傷探し」がカギ、一級建築士の大家がたどり着いた「買わない物件」の4条件|楽待不動産投資新聞によると、彼女が重視しているのは「致命傷探し」。派手なリフォーム提案よりも、そもそも手を出さない物件の線引きを4つ決めている点が実務家らしい。
買わない条件をあらかじめ言語化しておく発想は、我々の設計レビューやBIMモデルの受け入れ基準にもそのまま通じます。「良いモデルの条件」より「受け入れない条件」を先に決めた方が、現場は動きやすい。
78歳の一級建築士が自宅に建てた6mのツリーハウス
骨髄異形成症候群で余命1年と告げられた妻を元気づけたい、という理由で自宅に6mのツリーハウスを作った78歳の建築士の話。BSSニュースとYahoo!ニュースの両方で取り上げられていた。
建築士の資格って、こういう「発注者ゼロ、施主は自分と家族」みたいな仕事にこそ本質があるのかもしれない、と少し思わされた。要件定義がすべて自分の中にあるプロジェクト。
カラフル一級建築士・天野一男さん
北日本新聞webunプラスで紹介された天野さん。詳細記事は有料で読めていないものの、地方紙が「カラフル」というキャッチで建築士個人を取り上げること自体、業界の見せ方が少し変わってきている兆しに見えます。
ゼネコンBIM担当としての独自考察
今週の3件、テーマがバラバラに見えて、共通点があると感じてます。いずれも「組織を離れた一人の建築士」の話であること。うちみたいなゼネコンで働いていると、建築士=設計部の資格、くらいの認識になりがちで、施工管理側や私みたいなBIM推進部隊が持っている資格は、正直あまり活きる場面が少ない。
ただ、みつさんの「買わない4条件」の考え方は、社内標準化の実務にそのまま応用が効くと思っています。うちでも一貫BIMを進めるうえで「テンプレートに沿ったモデルとは何か」を延々と議論してきましたが、協力会社に配るガイドが分厚くなるだけで運用は回らない。むしろ「このレベルのモデルは差し戻す」という致命傷リストを2〜3個に絞った方が、現場のBIMマネージャーも判断しやすい。次の標準化改訂で、受け入れ基準を「NG条件」の書き方に変えてみようと思ってます。
導入ハードルはいつも通り、協力会社側のリテラシー差です。うちの現場でも、鉄骨ファブとサブコンで扱えるモデル精度がまったく違う。NG条件を厳しくしすぎると発注段階でモデル提出を渋られるので、致命傷ラインは「後工程の積算・干渉チェックが破綻するか」で線を引くのが現実解かなと。まだ試せてないですが、次の中規模案件で回してみたい。
ツリーハウスの話は業務に直結しないけど、「施主=自分」で建てる建築士の姿は、BIMツールを触っている自分にも刺さりました。普段の仕事だと発注者要件と社内標準と協力会社の都合の板挟みで、自分がどう建てたいかを考える瞬間があまりない。ツールに詳しくなるほど、なぜ建てるかを忘れがちになる、という自戒です。
総括
今週の「一級建築士」ニュースは、BIMや建築DXとは全然違う場所で起きていた。でも、築古投資家の「買わない条件」は、社内標準の書き方を見直すヒントになりそうだし、78歳のツリーハウスは、資格の使い道を業務の外側から思い出させてくれた。来週の月曜、まずは自分たちの受け入れ基準ドキュメントを開いて、NG条件を3つに絞り直すところから始めます。