2026.09.30Archicad

今週の「一級建築士」トレンド:体育館保存運動から映画レビューまで、建築士の発信領域が広がっている件

ArchicadAutodeskBIMRevit一級建築士建築DX週間まとめ

先週、協力会社との鉄骨納まり調整で丸一日つぶれた。図面上は綺麗に収まっているのに、現場の職人さんから「これじゃ溶接トーチが入らない」と一蹴される。BIMを回していても、こうした一次情報は結局、経験を積んだ一級建築士の頭の中にある。そんなことを考えながら今週の「一級建築士」関連記事を眺めていたら、思っていた以上に発信の幅が広くて驚いた。設計実務から離れた場所で語る建築士が目立つ。

今週の一級建築士まわりで気になった話題

旧香川県立体育館の保存問題と「再生の会」の提案

丹下健三設計の旧香川県立体育館、通称「船の体育館」について、一級建築士の河西範幸氏が代表を務める「船の体育館 再生の会」が動いている件。日曜コラム洋々亭45:旧香川県立体育館問題で「再生の会」のサウンディング型市場調査の提案がすご過ぎる件 | BUNGA NETで紹介されている。

今年2月に香川県が取り壊しの方針を正式発表したのを受けて、2021年10月のサウンディング型市場調査に提出された「幻の船の体育館再生計画」を改めてWebで公開した、という流れらしい。行政の意思決定に対して、民間の建築士が具体的な再生案をぶつけていく構図。個人的には、こういう保存活動って情熱で語られがちだけど、市場調査の枠組みに乗せて事業性を示している点が効くと思ってます。

風水と建築士という組み合わせ

来年「丁未」(ひのとひつじ)は先が見えない状況|風水で備えをでは、一級建築士の八納啓創氏が来年の干支と風水の話をしている。住宅設計の現場では、施主から方位や間取りの吉凶を相談される場面が今もある。理詰めのBIM設計とは対極に見えるけど、施主対応の武器として風水を語れる建築士がいるのは合理的だと感じた。

映画レビューや教育イベントに広がる発信

「本質論のための方法論を駆使するリンカーンを追ったが…」リンカーン KENZO一級建築士事務所さんの映画レビューは、建築士事務所名義で映画.comに投稿しているレビュー。事務所ブランディングとして映画評を出す発想は面白い。

教育系だと「Architect Sheep」特別企画 建築家・谷尻誠が学生の質問に答えるが10月21日に開催予定。メ〜テレスタジオ観覧+オンライン配信で参加無料。学生向けだけど、若手技術者が聞いても得るものは多いはず。

ゼネコンBIM担当としての独自考察

今週の記事を通して感じたのは、一級建築士の役割が「図面を描く人」から「設計思想を社会に発信する人」に広がっているということ。旧香川県立体育館の件で河西氏がやっているのは、単なる保存署名活動ではなく、事業スキームまで提案する行為。これはゼネコンの提案営業にも通じる話で、うちの設計部と施工部が組んで発注者にVEを出すときの構図によく似ている。

じゃあこれをBIM推進の文脈にどう活かすか。ひとつは、既存建築物の保存・改修案件でBIMを回すときの説得材料になると思ってます。既存不適格の躯体をスキャンしてBIM化し、複数の再生シナリオをコストと工期で並べて発注者に見せる、という流れ。旧香川県立体育館のような案件が今後増えるなら、うちの積算部と一緒に「保存BIMテンプレート」を整備しておく価値がある。まだ社内で議論を始めた段階なので、来月の標準化会議で提案してみるつもり。

現実的なハードルもある。既存建物のスキャンデータをRevitに載せるところまではできても、そこから協力会社の施工検討モデルに落とすときに情報粒度が合わない。設計LODと施工LODの橋渡しは、結局ベテラン一級建築士の判断に依存している。ここをテンプレ化しないと、標準化とは呼べない。

もうひとつ、八納氏の風水記事から連想したことがある。施主対応の「言葉」を持っている建築士は強い。BIMのビューアで3Dを見せるだけでは伝わらない領域があって、そこは技術ではなく語彙の問題。BIM担当としては、モデルから引き出せる情報(日照、通風、視線)を、施主が納得する言葉に翻訳する仕組みを作れないかと考えてます。

総括

今週の記事を横断して見えたのは、一級建築士という資格が、設計行為の外側でも発信の看板として機能しているという事実。保存運動、風水、映画レビュー、学生向けトークイベント。どれも直接BIMとは関係ないけれど、建築士の言葉がどこで消費されているかを知っておくのは、社内標準を作る側にとって無駄じゃない。

来週の標準化会議で「保存改修BIMテンプレ」を出してみる。通るかどうかは分からないけど、動かないと何も始まらない。

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