先週、現場監督から「竣工前の外構確認、わざわざドローン飛ばして点群撮るほどじゃないんだけど、写真だけで3Dにならない?」と聞かれた。そのタイミングでThree.jsが3DGSに正式対応し、KIMOTOが「使う3DGS」を打ち出す記事が立て続けに出てきた。3D Gaussian Splattingが”研究の話題”から”業務で触る対象”に移りつつある気配を、今週は特に感じた。
今週の3DGS関連の動き
Three.js r186で3DGSが標準装備に
9月9日公開のThree.js r186で、WebGPUベースの3DGS対応が追加された(Three.js r186リリース 3DGS対応、ボリュメトリックフォグ、新マテリアル、スカルプトなど機能多数追加)。これまでSparkなどのサードパーティ依存で組んでいたWebビューアが、本家ライブラリで動くようになる。社内の発注者向けプレゼ用Webビューアを内製している身からすると、依存ライブラリが減るのは地味にありがたい。
関連して、Spark v2.0のLoD機能で重い3DGSデータを軽快に表示する試みも紹介されていた(Spark v2.0のLoD機能で重い3DGSデータを軽快に表示する)。点群数の多い3DGSはブラウザで開くと平気で数GB食うので、LoDが入ったのは実務目線で助かる。
XGRIDS LCCで撮った3DGSをRealityScanでフォトグラメトリ化
XGRIDSのLiDAR+カメラ機器で取得した3DGSデータを、RealityScanに流して再構築する検証記事が出ていた(3DGS(XGRIDS LCC)をRealityScanでフォトグラメトリ再構築する【前編】)。3DGSはそのままだと寸法を測ったりBIMに取り込んだりしづらい形式なので、「3DGSで撮って、別形式に落とし直す」ワークフローは現場で現実的に起きそうな流れ。
「見る3DGS」から「使う3DGS」へ
KIMOTOが3DGSトータルサービス「SPLAT TWIN」に新アプリ「kimotoGS」を追加した(見る3DGSから、使う3DGSへ。KIMOTO、3DGSトータルサービス「SPLAT TWIN」に新アプリケーション「kimotoGS」を追加)。NVIDIAはフィジカルAI向けのロボット訓練データとして3DGSを使う事例を公開(3DGSを使ったフィジカルAI向けロボット訓練事例をNVIDIAらが解説 ほか)。鑑賞用の美しい3Dから、計測・訓練・業務に使うデータへと用途が広がる方向性がはっきりしてきた。
物理を知らない追跡は20cmズレる
直接3DGSの話ではないが、映像から物体の跳ねや摩擦を推定するPoCも面白かった(卓球の球は跳ねるので、物理を知らない追跡は着地点を 20 cm 外す)。3DGSで撮った空間に動的物体を乗せるとき、物理モデルを持たない追跡はどこかで破綻する。施工シミュレーションに3DGSを使う未来を考えると、無関係とは思えない話題。
ゼネコンBIM担当としての独自考察
うちみたいな中堅ゼネコンで3DGSが刺さりそうな場面を、素直に挙げてみる。
- 既存改修案件の現調。既存図が無い、あっても信用できない案件で、スマホ数百枚から3DGSを起こして発注者と合意形成に使う。従来のレーザースキャナより機材のハードルが低い。
- 施工中の出来形記録。週次で現場を撮り、工程会議で過去と現在を並べる使い方。これは今も360度カメラでやっているが、3DGSなら視点を自由に動かせる。
- 発注者向けの竣工プレゼ。BIMモデルは正確だがマテリアルの作り込みが大変で、実物の空気感が出ない。3DGSは実写ベースなので「ここの照明の見え方」まで伝わる。
一方で、社内標準化の目線だと詰めきれていない点が多い。3DGSはメッシュでも点群でもないので、ReCapやNavisworksに素直に乗らない。XGRIDS→RealityScanの記事のように「変換を挟む」運用が当面は現実解で、ネイティブに扱える主要CADが揃うまで標準フローには組み込みにくいと思ってる。積算との数量突合に至っては、3DGSから直接数量を出す発想自体が成立しないので、あくまでBIMモデルの補助資料という位置づけになる。
個人的には、まず社内のBIM推進メンバー2〜3人でSPLAT TWINかSparkベースのビューアを触ってみて、1案件を試験的に撮り、発注者打合せで使ってみるくらいが現実的な一歩。協力会社に展開するのはもっと先。データ容量と閲覧端末の問題で、現場PCでは重くて開けない未来が見える。
総括
Three.jsの標準対応、LoDの実装、国内サービスの業務応用。今週は3DGSを取り巻く環境が、研究寄りから「現場で触れる技術」側に一歩寄ってきた印象を受けた。BIMモデルを置き換えるものではなく、BIMで表現しきれない”現実の見た目”を補う役割として、使い道を探っていきたい。来月、既存改修の現調が1件あるので、そこで試しにスマホで撮って3DGS化までやってみるつもり。結果はまたどこかで書く。