月曜の朝、積算担当から「このモデル、鉄骨の数量が図面と合わないんだけど」と内線が入った。属性が抜けているファミリを協力会社が差し替えたのが原因で、半日潰れた。こういう地味な突合作業をどう減らすか、というのが自分の仕事のかなりの割合を占めている。そんな中で今週は、清水建設のAutodesk Forma活用の記事と、国交省のBIMデータ審査構想の発表が目を引いた。順に整理していく。
今週のBIM関連ニュース、三つの軸
清水建設の「20億、2人」構想
Forma活用で「20億規模の現場を2人で運営」 清水建設が構想する”AX”では、20億円規模の現場を常駐2名で回すという目標が掲げられている。Autodesk Formaを基盤に、BIMデータと「言葉」を紐づけてAIを育成し、鉄筋の納まり判断や製造連携へ広げるという話。
注目したのは、モデルの属性情報だけでなく、現場で交わされる判断の言語化までデータ化しようとしている点。鉄筋の納まりは、ベテランが図面を見た瞬間に「これは納まらない」と判断する領域で、ここを形式知化できれば若手の負担はかなり減る。ただし、2人で現場を回すには協力会社側のBIM対応がセットで進まないと成立しないはずで、ゼネコン1社だけの話では終わらない。
国交省のBIMデータ審査、基本構想
国交省、BIMデータ審査の基本構想公表は、確認申請をBIMデータで審査する方向性を示したもの。これが実装されれば、申請用に2D図面を別途整える工程が消える可能性がある。
うちでも申請直前になって図面とモデルの不整合を直す作業が常態化していて、ここの工数は馬鹿にならない。審査が通るレベルのBIMデータを最初から作る、という前提に業務フローを組み替える覚悟が要る。
Vectorworksのスケッチ連携と施工BIMの企画
iPadで描いた建築スケッチをBIMへ直接反映 Vectorworksの新機能は、意匠検討の初期段階からBIM化が進む流れ。施工BIMのインパクト2026の社告も出ていて、施工フェーズでのBIM活用が改めてテーマになる年になりそう。Medium掲載のDel modelo al dato: automatizar Revit MEP con códigoも、BIMモデルをデータベースとして扱いコード側から自動化する発想で、方向性は清水建設の話と同じ軸にある。
ゼネコンBIM担当としての独自考察
清水建設の「20億、2人」は、売上規模が違うのでそのまま真似できる話ではない。ただ、分解してみると自社でも手を付けられる部分がある。
- 属性情報の標準化。ファミリやオブジェクトに持たせる属性の社内ルールを固めないと、AI学習以前にデータが使い物にならない。今うちで進めているテンプレ整備は、結果的にこの土壌づくりになる。
- 判断の言語化。鉄筋納まりのレビューで出た指摘をテキストで残す運用を、まず1現場で試したい。モデルと指摘テキストを紐づけておけば、将来AIに食わせる素材になる。
- 協力会社との属性受け渡し。差し替え時に属性が落ちる問題は、受け入れチェックを自動化するスクリプトを噛ませれば減らせる気がする。ここはまだ試せていない。
国交省のBIM審査については、意匠設計との早い段階からのすり合わせが前提になる。社内の設計部門とは別会社の協力設計事務所も多く関わるので、審査用データの作成責任をどこが持つか、契約段階で整理しておかないと現場に押し付けられる展開が見える。個人的な予想だが、最初の数年は「BIMで出せるけど2D図面も併せて出す」二重作業期間が発生すると思う。これを短く終わらせるには、社内で先行して一貫BIMのワークフローを回し、知見を貯めておくしかない。
Vectorworksのスケッチ連携のような上流側の進化は歓迎するものの、下流で属性が整理されていないと結局は意匠モデルを施工用に作り直す羽目になる。上流と下流を同時に詰めていく話で、どちらか片方だけでは効かない。
総括
今週の記事を並べてみると、BIMが「モデルを作る話」から「モデルの属性と判断履歴を貯めてAIに渡す話」に移ってきている。うちの現場でまず何をするかと言えば、来週の定例でファミリ属性チェックのスクリプト試作を提案してみようと思ってる。小さく動かさないと、2人で現場を回す未来はいつまでも他社の話で終わる。